2007-07-01から1ヶ月間の記事一覧

呪殺

紗映は放課後、美香の待機する職員室に向かい、場所を移し昨日の会話の補足を話し合っている途中であった。 『仮初めの術法‥でも、どうして? それほどまでに強大な力が必要なら、vanityが直接駆り出して来ればいいはずじゃ‥ こんな手法はあまりにもまわりく…

空蝉(うつせみ)

週末、美香は紗映にある場所へと連れて行って欲しいと頼まれ、私服姿で未里市の小さなバス停へと足を運んだ。 次のバスの到着を待つ途中、ふとした会話を紗映は美香にこぼした。『先生、先生は全てを犠牲にしてでも、 運命と、戦う勇気がありますか?』 唐突…

隻眼の少女・2

美香は紗映を連れて晋子が待つ館の一室へと向かった。 既に時刻は夜の十二時を廻っており、凛とした静寂が場を支配している。 『…美香かい。遅かったね。』 『遅かったねって、それは私の台詞よ。 いい加減携帯電話の一つぐらい持てばいいのに。』 『磁場は‥…

隻眼の少女・1

『もう…わかるって…?それは、一体‥』 闇夜の、人影のいない漆黒に等しい夜の静寂に二人の微かな声色が脈動する。 理解に苦しむ表情を見せる困惑の美香をたしなむように、紗映は軽くうつむいて話の続きを綴り始める。『いつか、誰かに本当の真実を打ち明けた…

その右手に握るものは

時期はやがて薄暗く冷たい闇夜を待つ冬が眼前に近づこうとしていた。美香は安い酒を呷り、まるで泥のようにうつむいて眠りに就いていた。 意識を僅かながらに取り戻し、晋子の自宅に電話をかける。だが、数秒間の機械的なコールが虚しく鳴り響く中、美香は携…

泡沫の海

伊達の死から早一ヵ月が過ぎようとしていた。 数多多くの生徒達は先月の青華祭の悲劇をやがて思い起こすかもわからぬ過去のものへとしまい込もうとしていた。 学園の前に連なる坂道から一組のグループの会話が伝わってくる。 『あの子、本当に伊達先生のこと…

過去と、彼方に眠るもの

『ずっと、ずっと遠い彼方の果てで、 感じていたよ。冷たくはかない力を。 月島、南‥ 君は、強くはかない者。その笑顔の下の闇にある、冷たく荒んだ姫の双眸。 葵‥君もみているかい? 君の妹の、真の姿を‥』やがて、彼女は君を超えるかもしれないんだという…