2006-11-01から1ヶ月間の記事一覧

氷の少女を名乗る・3

月島南編・第三話『…アオイ。貴方がせめて戻ってきたら…』 そこは、代々朝比奈家に関わる親族を奉る郊外の共同墓地であった。 晋子は先祖に定例の供養を施し、一人物思いにふける。 『このまがまがしい…気。11年前も、そうでした。 えぇ、 わかっていますと…

氷の少女を名乗る・2

月島南編・第二話 『南、あなた、なぜそれを…』 晋子の顔が苦悶に歪む。少しの間を置いた後で、重い口を開いた。 『この街の…未来が見えないのさ。南』 『どういうこと?』 『私の力でも、それは確実に読めない、何か見えない巨大な力を伴った聖なる儀式…も…

氷の少女を名乗る・1

月島南編 第一話『月が…歪んでいる…きっと、これは、予兆…』 青華学園の屋上に一人物憂げな雰囲気を醸し出しながら、月島南は立ち止まっていた。 思えば、この場所にきてから確かに日は浅い。 しかし、それだけに感じる想いがあった。 『冷たい…力…私を呼び…

白銀の糸を執る・2

その時、眼前にいる一人の少女から 形容しがたい程の魔力を謎の男は読み取っていた。 『素晴らしい… 別け隔てなく与えた能力のはずが、やはり対象となる宿主次第でこうもかわるのか。 嬉しい誤算だ。』 次の瞬間、鉄状の棒を握り締めた黒いヴェールの男たち…

白銀の糸を執る・1

『…父さん。』 イズミが、そっと伸にささやく。 『…お母さんのこと、愛してた?』 伸は、まるでうずくまった子供のように膝をぐらつかせたまま、座り込んでいた。 『…父さん。』 その時、不意にイズミの自宅に一本の電話が鳴った。おかしい。 ここ数日の間は…