2007-06-01から1ヶ月間の記事一覧

晋子、真実へ‥

『占い…なぜ、宮内君がそんなことを?』 宮内の行動が何を示していたのかは知る由もない。由香里との関係の先を何か別の指標によって見いだそうとしていたのか‥ 『いや、そんなもんじゃなかったってさ。隣人の親父さんが言うからにはどこそこの借金の取り立…

心の障壁

何時もの登校の最中、唯は他の生徒より早く登校していた。 校庭のそばにある花壇に水をやるのが今では唯の学業の他にやるべき日課と化していた。 いつからだったはよく覚えていない。 ただ、その日課はいつでもある日常に何かを添えるものとして定着するに至…

秋の終わり、君憂う頃・2

翌日。 外は何時にも増して肌に突き刺す程の冷たい風が吹いていた。 長袖一枚では肌寒い気候といって差し支えないぐらいであった。 南は仕事に励みながらsiestaの店の窓の外をそっと見つめている。 『姉さん… 彼等は知っている‥。姉さんのことも。そして、私…

秋の終わり、君憂う頃・1

『いらっしゃいませ!』 喫茶siestaに明るく活気のいい発声が響く。 siestaの再開業と共に片桐の古い時代からの付き合いの常連客で店内は賑わっていた。 南は制服のブラウスの上から水色の迷彩のエプロンをまとっていた。 常連の壮年客に追加注文を受ける際…

帰ってきた男

秋の終わりを告げる冷たい風が何時にも増して厳しい。 一人、誰もいない図書室にて美香は調べ物をしていた。 青華祭の事件から早二週間が経とうとしていた。人々はさまざまな噂を学園内で流し続けた。 教師と生徒の歪んだ関係、教師側の外界からの重圧、生徒…

満月の犲狼・2

そこは果てしない場所であった。 移ろい行く時空の果てにある場所で二人の囁く声が聞こえる。 『計画は?』 『伊達を失い、鍵を簒奪し能力者を抹殺する術を失っては… それほどまでだというのか。月島の秘められた魔力は…』 『我々が侮りすぎていたのか、それ…