2007-02-01から1ヶ月間の記事一覧

時の狩人・2

『裏切られる想いなら始めからなかったことにしてしまえばいい。 心の痛みを引きずって生き続けるというのか? この手を取れ。 ‥お前には力がある。 お前を傷つけた愚劣な輩に狂気の刄を。』 夢だ。 願わくば、あの時からの出来事全てが夢であってほしい。 …

時の狩人・1

『そうか、奴らはここに集まるのか… さすがは“サトリの法”を持った能力者だ。これなら、鍵の存在をこの俺の手中にいれることもたやすい… フッ、待っていろ… 鍵さえ手にいれれば、この俺が、秩序さえも、全て…』 『…誕生日?』 南がきょとんとした表情で美香…

追憶のソリチュード

一瞬、淡く白い光がぱっと輝いて収縮して霧散するように消えた。 それは不思議な感覚だった。まるで身体の中に新しい熱を帯びた脈動が駆けるようであった。 『これは…』 考える間もなく、疲労した肉体がひどく睡魔を呼び覚まそうとしているのか、イズミはそ…

母のナミダ・2

『貴方は、誰…?どうして、能力者のことを知っているの?』 『私の記憶が、呼んでいるから… 歩まずには、いられないの。』 その少女は美奈であった。満身創痍のイズミに歩み寄り、そっと手を貸そうとする。 その屈託のない表情にイズミは抵抗するのを止めた…

母のナミダ・1

不思議な感覚だった。 口が熱い。 まるで焼けただれるように口が熱い。 まるで鉄の粉を飲み込んだかのようにざらざらした感触がある。 無意識に軽く痺れかけた片方の手で口を拭おうとする。 放っておいたらまた意識が飛んでしまいそうだ。 いったいどのくら…

朝を願う者・2

『…ミイラ取りが、ミイラになってしまったか。』 静粛な聖堂の中でひっそりと、一人の素顔を黒いヴェールに隠した老女が告げる。 『いえ、 もともと彼女に渡した力はさほどの物ではなかったではないですか。だとすれば…』 一人の少女が憂いを込めた瞳で相づ…