2007-03-01から1ヶ月間の記事一覧

宴の前夜に…

青華祭前日の夜。 学院内は明日に向けた準備に余念のない状況でいつもより遥かに多くの数の生徒が氾濫していた。 『伊達先生。明日の祭の施行に向けた準備もとどこおることなく進んでるようですな。こちらとしても伊達先生の助力にはただ賛辞の言葉を添える…

眠れる獅子

『君の能力‥ ヒトの心の真実をその瞳に焼き付ける能力だ。 つまりは、彼女が見る瞳の奥に眠る少女こそが、 鍵となりえるということか… まだだ、まだ遠すぎる。しかしすべからく時間と言うものは無情に過ぎていく…』 週末の土曜日の朝、南が晋子の館の二階の…

縁起

『すなわち縁起とは、因縁生起とも呼び、他から縁となって生じるものから関与する一般的事象のことを…』 『一般に縁起は悪いイメージに結び付けられやすい。だが、かならずしもその解釈は正しいとはいえない。』 『世界全体の調和もまた、一つの縁起の背景に…

胎動

『人間の最大の恐怖は孤独である。 …それなのに人はなぜ自ら一人になろうとするのを望むのか。 なぜ、解らないのであろうか。 孤独こそが、魂を蝕む最大の毒であるということを。ある者は云う。 孤独を悟り、誰かを求め、永遠を誓う。 だが、人が人である存…

友の死、そして…

イズミの死から一夜明け、青華学園の講堂にて事の経緯を一同、生徒の前にて伝えようとする光景が繰り広げられていた。 突然の同級生、同世代の少女の壮絶な死に周囲の生徒達は驚嘆を隠せずにいた。講堂の前では美香が漆黒のスーツに身を包み、凛とした表情で…

黒い断頭台・2

聖堂にて。 一人の老婆らしき女性とそれに寄り添うように佇む一人の若い少女の姿があった。 『冷たく、妖しい氷の瞳の少女… もしや、きやつが…』 聖堂の扉は幾重にも張られた結界にて封印されている。人はおろか蟻の入る隙間さえ幾分も存在するものではなか…

黒い断頭台・1

外の風が強く、冷たさを増して美奈に染み付くように差し込む。 美奈は、声にならない悲鳴の行方を辿ってその足を早めていた。 『声…ううん、私ならわかる… イズミは、あの場所に…』外に浮かぶ景色に目も暮れることもなく、美奈は昨日イズミと二人で話したあ…

薄紅の落葉の下で

もし生まれ変わった時に自分の望む世界があるとしたら、私は何を願うだろう。大切な人がいて、大切なものがあって、 その先に、 何があるというのだろう。 未来… 望まない人間にも、訪れるものだということをまだ私は知ることはできなかった。 『………』 血の…