2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧

逢魔が時・3

『余りにも痛々しき悲痛なる姫君の運命。無慈悲に、数刻の暗転を持ってして彼女は再び窮地の淵へと落とされる。悲しきかな。 これもまた彼女のさだめ。 百合の聖書がもたらした、“救い”そのものであった。』 それは時間にして、数秒にも満たない一瞬の間合い…

逢魔が刻・2

闇が目前に迫り、太陽が地平へと沈もうとするその刹那。 『この感じだ… 私があの時に感じた冷たい妖気。ずっと誰かに凝視されていたかのような感覚。 私はその感覚の微かな跡を辿っていた。確信はないけど…でも…』秘めたる想いの在処の先に待ち受けていた未…

逢魔が刻・1

『奇遇だな。』 含みを込めた表情で茗荷は悟流に語りかける。持っていた携帯灰皿からは灰の残骸が今にも溢れそうであった。 『茗荷さん‥どうしてこんなところに。 まさか、有給休暇の余暇に来たわけじゃないでしょう。』 『相変わらずのつまらん冗談だ。 営…