2007-10-01から1ヶ月間の記事一覧

あの日に帰れるなら

南は、幾度となく真冬の宵闇をかきわけるように季樹の姿を探した。 『季樹君が、いないのよ…どうして、 昨日まで、まるでうそのように身体の状態が回復して元気に話していたのに… そういえば、堀君の病室の引き出しからこんな小さな鍵が落ちていたわ。』 季…

第四の戦士、明かされた真実

『真実を知ろうとする心 その心に宿る 偽り無き想い。 例え、 きみの心が冷たく凍り付いた悲しい運命だとしても、それでも、 君を小さく想う心は忘れないと誓う。』 『時間だ。 君がこの場所で朽ち果てることで俺はただ一人目的を叶えることができる。全ては…

サトリの法

『百合の聖書に込められた残留思念… サトリの法で…』 心を無と同化させる。 瞳をそっと閉じ、百合の聖書の背表紙に手を触れる。するとどこからとまなく百合の花の幻影に伴って南の脳裏に一つのイメージが浮かぶ。 『季樹君…』季樹の姿が記憶に蘇る。その背後…

白銀の癒し手

ざわざわと外を湿った嫌な風が吹き抜ける。 この病室のカーテンの向こうの世界から、冷たい、奸なるものを美奈は感じていた。 自らの能力を悟り、生きてきてから幾つかの日々を歩んできたが、言葉に出来ない、悪い何かが、予兆のようにインプットされて脳裏…

虚構に舞う百合・3

【念次がその本を自分に託して、早一週間が経過しようとしていた。】 託されてからの数日は、何かと煩雑な日々の生活に悩まされ、また、受験の日も刻一刻と迫っていたこともありふとした契機でその本を眺める機会は無かった。 表紙には純白な百合をモチーフ…