過去と、彼方に眠るもの

『ずっと、ずっと遠い彼方の果てで、
感じていたよ。冷たくはかない力を。
月島、南‥
君は、強くはかない者。

その笑顔の下の闇にある、冷たく荒んだ姫の双眸。
葵‥君もみているかい?
君の妹の、真の姿を‥』

やがて、彼女は君を超えるかもしれないんだということを。

悲しく瞬きもしない瞳の視線を背後に、vanityは笑う。
vanityの奥深い思念がまるで世界を包括するようにアンテナを張る。その力が懸念していたものは、まさに一人の能力者、氷の力に護られた能力者の少女そのものであった。
‥予感がする!否、それはすでに確立された確信のような断定的事実に等しい。彼女は“鍵”を開く為にかかわるものであることを。
『状況は?』
『集まっています。集うものの気が。
これで彼女達を補足しうるかどうかは定かではありませんが…』
『ならば、尚良い。
状況は不確定なほどおもしろい。その混沌の中で彼女達がどんな力を魅せてくれるか、それは楽しみだ‥ククッ‥』

『さて、過去の怨霊が未里を包む気配がする。
動いたか。
‥死の決着。ここでつくべきか。それとも‥?』
vanityは静寂の空気の中、再びうつむくように眠りに就いた。