2008-07-01から1ヶ月間の記事一覧

魔女の余裕・3

今日の日付がもうすぐ終わりを迎えようとしていた。 宴は終わる。 甘美なる歓声と酒の匂いに満たされた空間の中で、悟流は配膳されたグラスに年代物と思しきワインを注ぐ。ちらりと悟流は窓際を眺める。 外の雨の具合はよく見えない。ただ、窓に軽く打ち付け…

魔女の余裕・2

夜は次第に更けていきその深さを増して行った。 だがこの入り口の扉を開くとそこは甘美なる楽園に連なる宴が形成されていた。悟流は新聞を読み耽って受付の退屈な時間を潰す。もっとも二十二時を過ぎたこの期に及んで受付の仕事がかさむわけでもない。 名簿…

魔女の余裕・1

ひどくその日の夜は寒かった記憶を覚えている。 まるで冬が未だ見ぬ春の訪れを引き止める意志を伝えようとしていたかのようであった。彼女にどんな内容のメールを返したのは覚えていない。 言葉を選んでいる余裕すらもなかったのであろう。 ただ、その日の夜…