早過ぎる夜を待つ

早夜は、ひとり郊外にある喫茶店に身を潜めていた。幸いマネージャーの自宅が近く連絡手段もすぐにつきやすいということもあったのだが。
紗映からの連絡を待つことにした。

『あのHPは見たよ。』
『真意のほどは定かではないけど、とりあえず夜にそちらにむかいます。気を付けてください。紗映』

そのメールから1時間。早夜は窓の外に見慣れた少女の人影を見かけた。紗映はかるくアイコンタクトをかわし早夜のもとへと足を運ぶ。
『おまたせ。』
『それは…何?その左手にもってるものは。』
早夜が訝しい表情で紗映に問い掛ける。確かに紗映の左手には何やら怪しげな数珠のようなものが握られていた。
数珠の先には何やら黒光りする宝石のようなものが見えた。
『時と、場合によっては…ね。』
紗映は軽く微笑んで早夜の質問をかわす。

『それより女優という仕事も大変なのね。こんな辺鄙な店に入るのにもサングラスが必須だなんて。そもそも似合ってないし。』
…紗映の口から冗談めいた台詞が聞けるとは思わなかった。
『それと、あなたの姉さんを、目覚めさせる術が、もしかしたら…』
その一言に早夜の瞳がひきつるように動いた。
『これからどうするの?』 『敵の本当のねらいがつかめるまではわからないの。ただ、そのねらいが本当に早夜、貴方なのか…それは…』
『わかったよ。
じゃあ、私は一度病院に戻るから。』
『…じゃあ、今日は早夜、貴方と行動をともにするから。』
大丈夫、能力を暴走させたりはしない。まだ、その時ではないということはわかっているから。



二人はしばらくして病院へと戻ってきた。
日付が完全にかわるまであと1時間ほどはある、しかし、今夜はどうにもあのHPの内容と相まって一抹の不安を拭いきれないものがあった。
『早夜、こっちをむいて。』
『…?』
早夜がふりむくと、紗映が数珠に力を込めて言霊のようなものを黙読していた。次の瞬間、早夜の眼前に黒光を伴った壁が現れた。
『…これは?』

…to be continued.