宵に憂う

早夜は、言われるがままに道なりに歩き始めた。
あの病院からさして遠くはない場所だった。
そして、緩やかな歩幅で歩きながら彼女はそっと早夜に語り掛ける。
『…まずは、私の望みから、話すわ。早夜、貴方の力がほしい』
『ちょっとまって、いきなり、そんな…
力、力って…それは…』
『同じことは二度はいわないよ。能力者としての貴方の力。それを、私に』

『貴方は、いったい、何者…?』
『私の名前。名前に意味はないけど、
…鈴木紗映。
貴方と同じ能力者よ。』
〜早夜、貴方の秘められた能力は他の能力者より色濃いものなの。
それは、邪眼の力。
邪眼がもつ生粋の忌まわしい力が触媒となって早夜、貴方の体にはとてつもない魔力が眠っている。
なぜ、能力をつかわなければならないか。なぜ、こうなるさだめになるのか。それは、じきに、わかる。だから…


『……』
わかっていた。いや、本当は気付きたくはなかったのだろう。自分の身体に起こりえた変化。
そして、姉の異変。
でも、ここで、私が動かなければ何もなにもかわらない。それならば… 
『…このままだと、早夜、貴方の姉さんは私の仲間と同じ運命をたどる』
次の瞬間、早夜の脳裏に急激に鮮明な映像が浮かんだ。それは、あまりにも赤い、赤い鮮血に包まれたなにかが…
…to be continued.