君に寄り添う

『たとえば、自分の大切な人がこの世からいなくなったとして、
それで、命の重みだとか、尊さだとか、考えても、
…それでも、
それは、不毛なことにすぎないことに気付かされる。
結局、それでも、何も変わらない。あるのはただ死という現実がただ事実となってのこるだけなんだよ。』

悪い夢だ。
誰の囁きだろう。
寝付けない夜は耳に嘯く声は無視するに限ると思っていたのに。
どうにも、自分の意志が体と一致しないのは不自然だ。
『…姉さん。』
早夜は、ベッドに横たわっままの姉の姿を見つめている。
かれこれ、どれくらいがたっているのだろう。
半年前にも、5年前にも思える。
こうして寝顔の姉を見るのが日課になっているのは。
優しい寝顔だ。
多少の頬の張りをのぞけば、ずっと眠り続けているのが不思議とかいいようがない。
そういえば自分以外の人間がここにお見舞いに来たのをみたことがない。
よくわからないものだ。
『…じゃあ、今日もいってくるね。』
奈魅留の名を呼び、早夜は病室を後にした。

静寂に包まれた病院。もうすぐ夜が更ける。
そして入り口にまで辿り着いた時、早夜は背後に自分と同じぐらいの背丈の人影を覗くように見た。
『…人影、いや、ちがう。そこにいるんですね。
ファンの待ち伏せはちょっとばかり、不謹慎ですよ。』
『そう、ファン、だったらね…?早夜さん。』
『これから仕事なんです。お話は…』
『私にまで嘘をつくの?』
駄目だ。
ごまかしきれない。
どうして、気配は消していたはずなのに。
どうして。
『…邪眼師の一族。その昔、とある村に住む一族は人外の力を手に入れた。
そしてその力は聖戦にて絶大な戦力となって地上を潜伏する。
そして、その家系は、諸岡家。わかるわね。』
『そんな…』
『本当は、全部隠す気はなかったんでしょうけど。
半年前の事故。爆発。暴力。
まぁ、こんな野暮な場所では話さないわ。
私についてきて。
大丈夫、つれてきたその場所で殺したりなんかしないわよ。』
『…わかりました。いけばいいんですね。』
謎の少女に導くままに、早夜は病院の出口の扉を開いた。
…to be continued.